About -THE BOXER-

ボクサーが「本当に戦えるボクサー」である時間は短い。
多くのボクサーは己の体のピークを感じ取ったとしても、注目されない限り他者から記録を欲される可能性は低い。
雑誌などで写真等が残るボクサーは注目されたほんの一握りだけ。つまり、ほとんどのボクサーは記録に残してもらえないということ。

私も昔、プロで試合をするB級ボクサーだった。残念ながらその自分のピーク時に記録されたものは少ない。
私が現役の頃、ジムの練習生で写真家を目指している方がいて、撮りたいということだったので思うように撮ってもらった。
私は撮ってくれる事などほとんどなかったので写真をもらってとても嬉しかったし、引退後は自分にとってさらに貴重なものになった。


THE BOXER

Photo:Satoko Ohshima
2002.12.5 3-0判定勝ち vs秋保光晴(シシド)
この写真の試合が私(写真左)のラストファイト。

これを撮ってくれた女性写真家は風の便りで既に亡くなられたという話を聞いた。
生前、彼女の写真の使用許可をいただいて、デザイナーになるための作品づくりで写真を使用させてもらった。
本当に色々と感謝している。今になってお礼を言えないのが残念。

引退後、デザインの職に就き、写真も自分で撮るようになったのがきっかけで、ジムの後輩ボクサーも撮らせてもらうようになった。
ストイックな世界がフォトジェニックで、写欲にかき立てられ夢中でシャッターをおした。
ボクサー達との会話で意外な事を聞いたり、私が現役時代に上手くいった減量方や小技等を教えたり、そういったやりとりの中にも撮影のヒントがある。
そして写真を渡した時、予想以上に皆喜んでくれた。

大前提として、現役中は引退後の事はあまり考えず自分の写真を見てテンション上げて勝ち続けてほしい。
でも、世界チャンピオンになって全勝してても、引退する時は必ずくる。
「引退したら自分の写真を見てうまい酒が呑めるんじゃないかな。ずっと写真を残してもらえたら僕は嬉しいな。」
私はそんな感じの事を言ってこのプロジェクトはスタートさせ、これからも休み休み続いくと思う。

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興行で撮影許可を頂いたプロモーターの方々、ジムの関係者・コーチ・トレーナーの皆さん、そして撮らせてくれたボクサー達に、心から感謝いたします。
ありがとうございました。
これからもよろしくおねがいします。